お釈迦様にはたくさんのお弟子さんがあったが、「周利槃特(チューダ・パンタカ、しゅり・はんどく)」のお話は印象に残る。
彼はお釈迦様の教えの言葉を少しも記憶できなかった。彼は自分の才能の無さに絶望し、教団を去ろうとする。しかし、お釈迦様の「自らの愚を知る者は真の知恵者である」という言葉を聞いて思いとどまる。
お釈迦様が彼に与えた修行は、掃除であった。一本の箒を与え、「垢を流し、塵を除く」と唱えさせ、精舎を掃除させた。彼は一心に掃除をした。
何年もたったある日、せっかくきれいに掃除をした所を子どもたちが汚してしまった。彼は思わず箒を振り上げて怒鳴った。「こら!なぜ汚した!」その瞬間、彼は本当に汚れている所に気がついた。
それ以来、汚れが落ちにくいのは人の心だと悟り、ついに仏の教えを理解して、阿羅漢果(あらかんか=煩悩を断って再びまよいの世界に流転しない位)を得たとされる。
あらゆる物事は多面的に見ていくべきだ。記憶力がいいのも大切だけど、それはその人の人格の一面でしかない。 周利槃特の逸話はそんなことを教えてくれているように思う。